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last updated 1997/07/21

第67話(全130話)

神族(6/10)




「きみがその質問を携えてやってくることはわかっておった。だから答えてあげた。きみの質
問はそれで終わりじゃよ」
「でも、空気の粒の大きさが違うから部屋が大きく見えるってのが答えなんだとしたら、おい
らには、何だかチンプンカンプンで・・」
「森に帰ったら仲間たちに伝えるが良い。大気に満ちる、気、をよくよくみつめてみるが良い
、とな。空気の粒の大きさが変われば部屋の大きさも違って見える。同じように何か大異変が
あるなら、その前に空気の密度が変わる。グノートンが騒ぐことで、森の大気に何か変化があ
ったら、その時は避難の準備を整えれば良い。そうではなく、大気の密度が変わらないのにき
みたちだけが大騒ぎをしているのなら、それはただの空騒ぎじゃ。どうもパピロ、きみたちは
いつも何かにつけ空騒ぎを繰り返す傾向にある。それも覚えておくといい」
「つまり?」
〈わざわざこんな山の上まで来たりして、ご苦労さんでしたってことじゃないの?〉
 言うフィンフィンに、パピロはキョトンとなったままの顔を向ける。
 空騒ぎ? 
 パピロはいきなり力が抜けたようになって、その場にヘタリ込んだ。
「何だよ、まったく。わざわざこんな高い山のてっぺんまで苦労して登って来たのに、莫迦み
たいじゃないかあ。それならそうと、山に登る前に言ってくれりゃいいじゃないか。登ってく
るまでもないぞ、何事もないから安心して森へお帰りってさ、それがやさしさじゃないか。こ
こまで来させといて、門前払いみたいに扱うなんて、ひどいじゃないか。ひどいよ。すごくひ
どいよ!」
 パピロは手足をバタバタさせて、尻尾で床をドンドン叩いた。
「それが空騒ぎなんじゃ」と長老。「第一、私達はお前をここに来させてはおらん。お前が自
発的に来たのじゃ。来るものは迎え入れるのが習わし。それに苦労してとか言うが、お前は自
分の足で登ってきたわけじゃなかろう。口を慎みなさい」
 穏やかな口調で、しかしピシャリと言われてさすがにパピロは黙った。
 神の末裔と言われているアーバムの長老に叱責されて、それでもなお駄々をこねられるほど
、パピロは強い心を持ち合わせてはいない。そんな強さがあるのなら、そもそも空騒ぎをする
こともないだろう。
 静かになったパピロをそのまま放っておいて、長老はマリカへと向き直る。一度チラリと囲
炉裏で燃えている火のほうに目をやり、タメ息をつき、そして言った。
「たったひとつの質問は用意できたかね?」
「はい」
「自分では答えの出せない質問じゃぞ?」
「わかっています」
「うむ。では聞こう」
「わたしはエルモの森の近くで不思議な少年を見掛けました。もう一度彼に逢いたいのです。
どうすれば逢えるのでしょうか?」
 真っ直ぐに長老をみつめて、マリカは尋ねた。
 ピートは驚く。
 それはぼくのことじゃないの? マスターの中に閉じ込められてるぼくの姿をきみは見たん
じゃないの? だとしたら、ぼくはここにいるよ。きみはずっと、ぼくと逢い続けてるんだよ
。 ピートは心の中でマリカへと言った。
 それにしても、マリカの質問はピートにとって、意外だった。マリカはきっと「わたしとは
果たしてどういう人間なのですか?」とそう問いかけるのだと思っていた。それを知るのが彼
女のこの旅の目的だったはずじゃないか。それがどうして、ぼくに逢う方法、なんてことにな
るのだろう? ピートにはマリカの気持ちがわからない。マスターならひと言「理解不能」と
言ってすましてしまうだろう。
「それが、きみの質問なのかね、マリカ」
「はい」
 マリカはうなずく。その目には強い意思が光っていた。
 長老はその視線を受け止めながら、ゆっくりと目を細める。
 しかし答えない。
 異世界からの侵入者のことまではさすがにトーテム・ポールに刻まれていなかったのかもし
れない。ピートはそう思った。
「よろしい」長老はうなずく。「しかしその質問に答える前に、こちらのロボットの質問も聞
いておこうか」
「え?」
 いきなり話を振られて、ピートはドキンとなる。
「ぼくの、質問ですか?」
「そう、きみの。たったひとつの大切の質問だよ。用意は出来ているかね?」
「・・はい」
 ピートは慎重にうなずいた。質問の用意は出来ていた。というよりも、ほかに問わなければ
ならないことはなかった。
「うむ。では聞こう」
「帰り道を、教えてください」

(つづく)




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